背守り ダブルガーゼTシャツ (アゲハ) M 販売終了
商品コード:28101-01

商品仕様: 着丈 53cm, 身幅 44cm, 肩幅 37cm, 袖丈 18
cm 綿100% 日本製
商品説明: 「背守り」のこと

一昨年のこと、ある古道具屋さんでかわいらしい和綴じの刺繍見本帳を見つけました。手のひらに乗るほどの小さなサイズなのですが、明治34年の年号が入ったそれには、20種類以上の文様が丁寧に刺されてあります。聞けば、昔の子どもたちの着物の背中に縫い付けられていた「背守り」と呼ばれる刺繍の見本帳なのだとのこと。古くから日本では、魔物はみな、人の背後から忍び寄ってくるものと考えられてきました。しかし、着物の背中の中央に縫い目があることで、その目が背後からの魔物をしっかりと見張って守ってくれているのだそうです。ところが、身幅が反物の幅そのままの子供の着物には背縫いがありません。そこで、背中に糸を刺し、背後からの魔物が入り込まないように防いだものが「背守り」というわけです。
江戸時代頃から全国的にあった習慣なのだそうで、典型的な「背守り」には、絹糸で背の中央に十二針縫い、男の子は左斜めに三針縫い下り、女の子は右斜めに三針縫い下るというような、決まりごとがあったようですが、しだいに自由な吉祥文様に変化していき、土地土地によりさまざまな意匠に発展していきました。今よりずっと、流行りの病気で命を落とす小さな子供たちの多かった時代でしたから、魔物といってもそれは、病気や怪我のことを指すのでしょう。兜や鶴の模様を糸で縫
いつけることで、子どもたちが健康にすくすく育つようにとの願いを込めたのですね。
大正15年版の裁縫教科書のなかに、「背守の縫ひ方」というページを見つけました。その時代には、まだたしかに受け継がれていた習慣であったわけですが、おそらくこの後、和服の急速な衰退とともに忘れ去られてしまったのだろうと思います。針を手に持って縫うということには、いつも呪術的な意味合いが含まれるのかもしれません。たしかに、思いや願いは縫われた糸にこもるということを信じられるような気がします。

以来、この「背守り」を、いつか何かのかたちでご紹介できる仕事ができないかと、ずっと考えていました。そして、京都にあるご夫婦お二人だけで手がけるガーゼ服と手刺繍スカジャンのお店「ガラージ」さんに出会ったことで、ようやく実現することができたのです。
なんで、ガーゼ服とスカジャン(=背中に派手な刺繍が施される光沢のある化繊地のジャケット。大戦後に横須賀周辺に駐留したアメリカ軍兵士が自分のジャケットに和風の刺繍を入れてもらったのが始まりとされる。)なの? と不思議な気もするのですが、お二人ともに「モノを作るのが好きで、服が好きで、一から全部自分たちでやるのが好
きで、誰でも好きなことって努力し頑張りつづけられるでしょ?」とおっしゃられるとおり、その両方が好きで好きでたまらないのです。
とにかく、肌に優しいガーゼ生地と手刺繍という願ってもない素材と技術をお持ちのわけですから、現代版の背守りを表現できるはずと思ったのです。背守りの刺繍は、古来の文様にこだわらなくて良いのでスカジャン感覚でとお願いしましたら、「アゲハ」と「鳳凰(ほうおう)」と「松」といういかにも元気が湧いてくるデザインが出来上がりました。ガーゼ生地は、通気性が有り、非常に軽く、暑い季節は涼しく、寒い季節には保温性があり、オールシーズンに着ることができる優れた生地です。さらにガラージさんでは、この優れた二重ガーゼをバイアス(生地を斜めに使うこと)使いにします。すると縦にも横にも伸びるので、着た時にほど良いフィット感があり、なんとも不思議な着心地。最初は、袖を通すときに生地が引っ張られることが着難く、肩や腕のあたりになんだか違和感が、と感じられるかもしれません。ところが、着ている間にだんだん体型に合わせて服自体が変形してきますので、他ではけして味わえない気持ちよさを実感していただけるはずです。

私たちの背守りTシャツが、一針一針に込められたいつの日にも変わらない母親たちの願いを思い出す、ひとつのきっかけとなれば嬉しく思います。
小売価格: ¥10,450
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ガラージ・中西 達也
1969年 京都府生まれ。京都芸術短期大学服飾デザインコース卒業。
スポーツ用品メーカーのパターンナー、装飾用美術陶板メーカーでの陶板作製をへて、イギリスで生活。
帰国後、着物の染め屋へ就職。今まで習得した技術と経験で自分でモノを作って販売する事を決意し、2002年ガラージをスタート。

ガラージ・中西 陽子
1968年 広島県生まれ。京都芸術短期大学服飾デザインコース卒業。
婦人服アパレルメーカーへパターンナーとして就職。その、後フリーイラストレーターやフリーパターンナーをへて永住するつもりでイギリスへ。帰国後、夫とともにガラージをスタート。
ホームページ http://www.2002garage.com/